公開日 2023年2月13日 最終更新日 2023年3月28日
意外と教えてもらえない不動産取得税の減税措置の申請と計算方法
人生においてマイホーム購入は最も大きい買物と言えます。マイホーム購入を無理のない予算の範囲で実現するためには、物件の価格だけではなく、その他にかかる諸費用や税金を把握しておくことがとても重要です。特に、税金は不動産と切っても切れない関係です。そして、マイホーム取得者には様々な税金がかかるため負担が大きくなる反面、マイホーム取得促進のため多くの減税措置があります。こうした減税措置は申告しない限り受けることができないため、あらかじめ知っておかないと後の祭りになってしまうことも…
そんな後悔がないように、今回はマイホームを購入される予定の皆さんに不動産の取得時にかかる税金のうち「不動産取得税」について解説し、減税措置や計算方法、申告の方法まで解説します。
不動産取得税とは
不動産取得税は、土地や建物を購入し不動産を取得した全ての人を対象に課せられる地方税で、取得した土地と建物それぞれに課税されます。また、固定資産税や都市計画税などは不動産を取得し所有し続けていると毎年課税されますが、不動産取得税は不動産を取得したときに一度だけ支払う税金になります。
不動産取得税がかかる対象は
不動産取得税は購入した土地と建物が対象となります。土地はすべての*㊟1「地目」が対象で、家屋の敷地である「宅地」や「田」「畑」「山林」「公衆用道路」など全ての地目で、土地を取得したときに不動産取得税が課税されます。
新築や中古、一戸建てやマンションを問わず課税されます。また、有償・無償での取得や登記の有り無しに関わらず課税されます。また、贈与などでも課税されることになります。
ただし、例外として「相続」は、相続人の意思に関係なく不動産を取得するということもあり、不動産取得税は課税されません。
*㊟1「地目」とは、その土地の利用目的で、土地の用途に応じて20種類以上の地目に区分されています。
誰が不動産取得税を負担するのか
不動産取得税を負担する人は不動産を取得した人で、具体的に下記の人が対象となります。
「土地や家屋などの不動産を売買や交換、贈与、新築、増築、改築等によって取得した人」
土地や家屋を取得した人に納税義務が発生し、不動産の新築や売買、交換、贈与によって取得された不動産だけでなく、増改築によって価値の高められた不動産も含まれます。
不動産取得税を支払うタイミングは
不動産取得税は地方税のため都道府県に納めます。不動産取得税はよく「忘れたころにやってくる税金」と呼ばれるのですが、新居に入居してしばらくすると各都道府県の税務所から上図のような「不動産取得税納税通知書」が送られてきます。(各都道府県が徴収するため、不動産取得税納税通知書の様式に若干の違いがあります)
登記簿上の所有権が移転(持ち主が変わった)したことを確認してから課税されるため、物件引き渡しが終わり所有権移転登記をした後に課税通知書が届くことになります。
具体的に届くタイミングは各都道府県ごとに若干の違いがありますが早ければ3か月後、遅いと1年後と幅は広めです。なぜなら、不動産取得税は賦課課税方式税金(都道府県が税額を計算し納税者に通知する)のため、税額計算のために調査が必要な不動産などもあるためです。
ちなみに下記は兵庫県における不動産取得税を納めるタイミングの記述の引用です。
取得の方法により納期は若干異なります。
土地や中古の建物を取得されたときは、取得(登記)してから約4か月後に納税通知書をお送りします。
建物を新築されたとき、あるいは新築住宅を購入されたときは、建物調査に基づき評価額を決定のうえ、課税することになりますので、建物の規模等の状況に応じて、取得からおおむね6か月ないし1年後に納税通知書をお送りすることになります。
なお、新築の木造住宅などの小規模な建物については、原則として、毎年4月頃に実施される市町の縦覧帳簿の縦覧後に不動産取得税の納税通知書をお送りしています。兵庫県ホームページ-不動産取得税について
また、大阪府など一部の都道府県では下記のように事前に予定税額や納期限を通知しています。
納税通知書(兼納付書)を送付する前に「不動産取得税に係る申告及び課税について(お知らせ)」等により、予定税額や納期限等をお知らせします。
大阪府ホームページ- 府税あらかると-
不動産取得税の支払い方法は
不動産取得税の支払い方法には、以下のような方法があります。
- 都道府県税事務所の窓口払い
- 銀行や郵便局の窓口払い(ATM振込み)
- コンビニ払い(*㊟2限度額30万円)
- 口座振替
- クレジットカード払い(*㊟3一部都道府県に限る)
- キャッシュレス決済(一部都道府県に限る)
- ペイジー(Pay-easy)(一部都道府県に限る)
*㊟2 コンビニエンスストアで不動産取得税を支払う場合、納付書1件の金額が30万円を超える場合はコンビニ払いはできません。
*㊟3 クレジットカードで不動産取得税を支払うとポイントが貯まるので、クレジットカードを利用しようとする方が多いですが、実は別途手数料がかかりますので注意が必要です。税金をクレジットカードで支払う場合は、決済手数料として取られることになります。納付できる金額も100万円未満となります。
大阪府、兵庫県、京都府、奈良県、滋賀県、和歌山県の不動産取得税の支払い方法
関西エリア2府4県(大阪府、兵庫県、京都府、奈良県、滋賀県、和歌山県)の不動産取得税の支払い方法を下記にまとめましたのでご参考になれば幸いです。
不動産取得税の計算方法は
では、不動産取得税の具体的な計算方法について説明します。不動産取得税の計算式は不動産を取得しようとしている全ての人に関係があります。実際の事務手続きで戸惑わないように計算方法はあらかじめ覚えておきましょう。不動産取得税の税額は、下記のように課税標準×税率という計算式によって算出されます。
不動産取得税の計算式に出てくる「課税標準」という用語はとても分かりにくいですが、税金を計算する際の対象(何を根拠に計算するのか?)を意味します。不動産取得税の計算の場合は「固定資産税評価額」を「課税標準」とします。「固定資産税評価額」の説明は後ほどご案内します。
不動産取得税の課税標準は実際に購入した価格ではない
不動産取得税の「課税標準」は、実際に購入した価格ではなく、「固定資産税評価額」が適用されます。なぜかというと、「固定資産税評価額」が3年に1回定められるため、その間に土地の価格変動によって所有者(納税者)の不利益にならないようにするためと、不当に高い評価額になって納税額が多額になってしまわないように70%が目安になっています。「固定資産税評価額」の目安は土地で時価の70%、家屋(建物)では建築費の50%~70%となっています。
固定資産税評価額とは
固定資産税評価額とは、「土地」と「家屋」(建物)を取得する際や所有し続ける際にかかる税金を決める基準(根拠)となる価格のことです。どのような税金かというと、固定資産税・都市計画税・不動産取得税・登録免許税などです。
固定資産税評価額はどうやって決まるのか
固定資産税評価額は地方税法の規定に沿って総務大臣が定めた固定資産評価基準を参考に評価を行い,各市区町村が「土地」と「家屋」(建物)に分けて価格を決める、という仕組みです。
固定資産税評価額は3年に1回定められ、実際に価格を決める際は各自治体の固定資産税評価員が「土地」と「家屋」(建物)を実際に一軒ずつ訪れて調査しています。「土地」と「家屋」(建物)は,原則として,3 年ごとに評価替えを行い,1月 1 日現在の価格を固定資産課税台帳に登録します。基準年度(3年に1回)以外は,新たな評価を行わず,基準年度の価格を据え置きます。ただし,基準年度以外で地目の変換や家屋の増改築、地価の下落等などの変化によって,基準年度の価格が適当でないと市町村長が認めた場合は新たに評価を行い価格を決定します。ちなみに、直近の基準年度は 2021 年度(令和 3 年度)で次回は2024(令和6年)です。
土地の固定資産税評価額の目安は
土地の固定資産税評価額は、実際の不動産売買価格より安いことが多く、国土交通省が毎年1月1日に定める土地の公的価格、地価公示価格(公示地価)の70%を目安に計算されます。土地の固定資産税評価額はどのように道路に接しているか、形状や面積など細かく評価して計算します。例えば、土地の地価公示価格が1500万円であれば固定資産税評価額は1050万円がおおよその目安になります。
家屋(建物)の固定資産税評価額の目安は
家屋(建物)の場合は、土地とは違い、再建築価格という基準を用いて評価額を決定します。再建築価格とは、同じ物件を現在再建築した場合にどれくらいの費用がかかるのかという意味であり、ここから経年劣化した分を差し引いて評価額を算出します。家屋(建物)の固定資産税評価額は基本的に再建築価格の約50~70%、新築の固定資産税評価額は請負工事金額の約50~60%が目安です。築年数や構造、間取り、住宅設備、家屋の大きさなどによって異なります。
このように、固定資産税評価額の目安は実際の不動産の販売価格の70%程度になる場合が多いので、例えば購入金額5000万円のマイホームであっても、固定資産税評価額は3500万前後というケースがほとんどです。仮に固定資産税評価額が3500万円であれば購入価格が5000万円であったとしても、不動産取得税の計算は3500万円を基準に算出していきます。
不動産取得税の税率は
不動産取得税の税率は、土地家屋ともに本則税率は4%です。ただし、下記のような各種軽減措置の要件を満たせば軽減税率3%が適用されます
不動産取得税は軽減措置がある
これまで説明してきたように不動産取得税の税額は、課税標準×税率という計算式によって算出されます。この計算式に基づいて不動産取得税を算出すると、土地と建物を合わせて納税額が数十万円と高額になってしまうことも…。予備知識がないまま不動産を取得して、いざ納税通知書が届いて顔が真っ青に…という人が非常に多いのも事実です。
でも、そんな負担の大きい不動産取得税を軽減してくれる制度があります。軽減措置の対象となるのは主に住宅用不動産です。新築や中古、土地と建物それぞれで条件が異なり、以下に住宅用不動産の不動産取得税の軽減措置の大まかな違いをまとめました。申請も必要なためしっかりと把握しておきましょう。「建物」と「土地」とで計算方法が違う点にも注目です。
新築住宅の不動産取得税の軽減措置は
新築住宅は中古住宅と比較して初期購入金額が高く、大きな負担になりがちです。しかし、一定の条件を満たした新築の住宅を購入すれば、不動産取得税の大幅な軽減措置を受けることが可能です。ここではまずは新築住宅の建物と土地の軽減措置の条件について、詳しく見ていきましょう。
上記の表は新築住宅における建物と土地の不動産取得税の軽減措置を適用した計算式です。
新築住宅の建物の軽減措置は
新築住宅の建物の不動産取得税の軽減措置は課税標準(固定資産税評価額)から、さらに1,200万円が控除されます。税額にすると1,200万円×3%で最大で36万円の軽減ということになります。マンションなどの共同住宅についても、1住戸につき1200万円が控除されます。また、建物が長期優良住宅に認定される物件の場合は1200万円の控除額が1300万円に引き上げられ、1,300万円×3%で最大で39 万円の軽減ということになります。認定長期優良住宅の特例は、2024年3月31日まで申請できます。認定長期優良住宅は申請が必要です。特例対象になると不動産取得税だけでなく固定資産税と登録免許税も控除されます。
軽減措置を受けるのと受けないのとでは、不動産取得税額に格段の違いがあります。条件を満たしている場合は、確実に受けられるよう申告しましょう。
新築住宅の建物の不動産取得税の軽減措置の条件は
では、この新築住宅の建物の軽減措置の適用を受けるための要件を見ておきましょう。
上記軽減措置の計算式を適用するための条件は下記の通りです。
[ 1 ] 床面積が50㎡以上240㎡以下であること(賃貸マンションは1戸当たり40㎡以上240㎡以下)
[ 2 ] 居住用そのほかも含め住宅全般に適用(マイホーム・セカンドハウス・賃貸用マンションなど)
これらの条件を満たす建物は「新築特例適用住宅」と呼ばれています。
新築住宅の土地の不動産取得税の軽減措置は
次は土地です。新築住宅の土地の不動産取得税の軽減措置の仕組みは建物の計算式と少し異なり複雑です。しかし、ベースとなる計算式はシンプルで上の表のようになります。
ポイントは、建物と異なり軽減額を最後に差し引くという点と、評価額に2分の1の控除率を乗じるという点です。この軽減や控除率の特例は2024(令和6)年3月31日までに取得すると適用できます。軽減額は以下の2つのどちらかのうち、いずれか高い方の金額に決定します。
①4万5千円
②(土地1㎡あたりの固定資産税評価額 × 1/2) × 課税床面積の2倍(200㎡限度)×3%
また、土地の評価額に掛ける「2分の1の特例」と「税率3%の軽減措置」は、不動産取得税と同様に2024年(令和6年)年3月31日までという期限があります。
例えば、下記の新築物件を購入した場合、計算は以下の通りとなります。
土地の固定資産税額:1400万円
土地の面積:60㎡
建物の課税面積:100㎡
控除される額
①の場合:4万5000円
②の場合:(1400万円÷60㎡)×2/1×(100㎡)×2×3%=70万円
このケースでは②のほうの金額が多くなるため、②の控除額が適応されます。この土地の控除前の不動産取得税額は1400万円×2/1×3%なので21万円です。ここから控除額を引くと、不動産取得税は0円ということになります。
新築住宅の土地の不動産取得税の軽減措置の条件は
では、新築住宅の土地の軽減措置の適用を受けるための要件を見ておきましょう。
上記軽減措置の計算式を適用するための条件は下記の通りです。
新築住宅で、建物の不動産取得税軽減要件を満たしていることと、次の3つのうちのいずれかに該当すること
[ 1 ]土地を取得してから3年以内にその土地上に住宅を新築すること。かつ住宅が新築されるまで、その土地を継続して所有していること
[ 2 ]住宅の新築前に先行して取得した土地を譲渡した場合、土地取得から3年以内に譲渡相手がその土地の上に住宅を新築していること
[ 3 ]住宅を新築後から1年以内に、その住宅を新築した人がその住宅の敷地(土地)を取得していること(土地を借りていた場合などに起こる事例です)
中古住宅の不動産取得税の軽減措置は
これまで新築住宅についての軽減措置を紹介しましたが、中古の住宅を取得した場合、新築よりも要件が追加されます。ここからは中古住宅を取得した場合の不動産取得税の軽減措置の控除額や条件について説明します。
上記の表は中古住宅における建物と土地の不動産取得税の軽減措置を適用した計算式です。
中古住宅の建物の軽減措置は
中古住宅の場合、新築した日に応じて、課税標準(固定資産税評価額)から金額が控除されます。控除額は都道府県によって若干異なる場合があります。中古住宅の「建物」の不動産取得税は、下記の計算式に、上記の表を参照して控除額を入れることで算出できます。
不動産取得税=(課税標準{固定資産税評価額}-控除額)×3%
控除額は例えば、1997(平成9)年4月1日以降なら1,200万円というように、新築日が現在に近いほど高くなります。
例えば、課税標準(固定資産税評価額)が1,400万円、新築した日が1998年だった場合の不動産取得税計算は下記の通りとなります。
軽減措置を受けない場合 | 軽減措置を受けた場合 |
---|---|
課税標準(固定資産税評価額)1,400万円×3%=42万円 | 課税標準(固定資産税評価額)1,400万円-控除額1,200万円×3%=6万円 |
中古住宅の建物の不動産取得税の軽減措置の条件は
中古の一戸建住宅やマンションの場合、新耐震基準が適用された1981年(昭和56年)以降に建築された物件かどうかが重要になります。それより前に建てられた建物の場合は、新耐震基準を満たしている、または改修によって満たすなどの一定条件をクリアする必要があります。
中古住宅の場合の条件は以下の(1)(2)を満たしたうえで、さらに(3)のうちのいずれか1つを満たしている必要があります。
(1)課税床面積が50㎡以上240㎡以下であること(住宅用の賃貸マンションは適用外)
(2)個人の居住用またはセカンドハウス用としての住宅であること
(3)以下のうちのいずれか1つ
・1982年1月1日以降に建築された住宅であること(固定資産課税台帳に記載された新築日で判断すること
・1981年12月31日以前に建築された場合、新耐震基準に適合していることが証明できる住宅であることや、既存住宅売買瑕疵保険への加入が証明できる住宅であること
・新耐震基準に適合しない住宅で、入居までに新耐震基準を満たす改修を実施する一定の中古住宅であること
中古住宅の土地の不動産取得税の軽減措置は
建物の不動産取得税の軽減措置は新築と中古では異なりますが、土地は新築も中古も同じ方法で算出されます。
土地の場合は新築と同じく固定資産税評価額が2分の1になります。また、中古住宅を建てた土地の不動産取得税の控除額は下記の2種類のうち、金額が多いほうを適用できます。
①4万5千円
②(土地1㎡あたりの固定資産税評価額 × 1/2) × 課税床面積の2倍(200㎡限度)×3%
上記軽減措置は2024(令和6)年3月31日までに取得すると適用できます。
納税や軽減措置の申請について
最後に、納税する時期や申請先について説明します。不動産取得税の軽減措置を受けるためには申告が必要です。不動産を取得後、数カ月すると納税通知書が送られてきますが、不動産取得税の軽減措置の申請をしていないと軽減前の税額が記載されているので、多額の税金を払うことになりかねません。申請先は、冒頭で説明したように都道府県の税事務所です。
申請期限があるので期限内に手続きを
申請期限は自治体の条例で定められています。不動産取得後は手続き関連で何かと忙しいため、手続きを忘れてしまいがちです。原則として期限内に手続きしなければ軽減を受けることができないので注意が必要です。これまでの試算でも分かるように、不動産取得税は軽減を受けるか受けないかで大きく負担に差が出るので、軽減が受けられないと余計な費用がかかってしまいます。
申請を忘れてしまっても税事務所に問い合わせを
手続きを忘れてしまい軽減前の税額の納税通知が送られてきた場合でも、まずは税事務所に問い合わせてみましょう。もし、申請期限が過ぎていても納税通知書を受け取ってから手続きすれば軽減が受けられます。ただ、期限後の手続きで軽減が絶対に受けられるとは言い切れません。不動産を取得後に自治体のホームページなどで期限を必ず確認しましょう。
株式会社Erwin 代表取締役
マイホーム購入の相談窓口 代表、ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー、住宅FPエキスパート。不動産や住宅予算診断、住宅ローンの専門家として、第三者的な立ち位置からのお金の専門家として、その後の人生を考えた上でのアドバイスを行っている。不動産に関わる知識や税務などのライティングに携わる。