公開日 2023年8月7日 最終更新日 2024年4月6日
今回は普段からご相談の非常に多いテーマ「住宅ローン控除(減税)」について、2回にわたって解説します。今回は仕組みや制度の概要などをわかりやすく解説していきます。
住宅ローン控除(減税)とは?
住宅ローン控除は別名「住宅ローン減税」とも呼ばれ、正式名称は「住宅借入金等特別控除」です。住宅ローン控除(減税)は所得税法に定められた控除制度で、ひと言で説明するなら住宅ローン控除(減税)は「国に納めるべき所得税が戻ってくる」制度です。住宅であれば新築・中古の別を問わず一戸建てやマンションどちらでも利用できます。
また、工事費が100万円以上のリフォーム(リノベーション)も対象となります。
住宅ローン控除(減税)を利用すると「国に納めるべき所得税が戻ってくる」
具体的にどのような制度かと言いますと、例えば、サラリーマンや公務員などの給与所得者は毎月の給料から必ず所得税を天引き(源泉徴収)されています。そして、年末に生命保険料控除証明書や小規模企業共済等掛金控除証明書(iDeCo)などの証明書を職場に提出(年末調整)の手続きをすると、払いすぎた所得税が戻ってくるので、12月や1月の給料はいつもよりも少し高めになっているかと思います。
住宅ローン控除(減税)の仕組みも同じで、毎月の給料から天引きされた所得税のうち、払いすぎた分がまとめて戻ってくるのです。なお、自営業の方など確定申告のときに所得税を支払っている場合は、所得税が戻ってくるのではなく、確定申告のときに支払う所得税が安くなります。
住宅ローン控除(減税)の仕組み
「住宅ローン控除(減税)は、住宅ローンを利用してマイホームを購入した場合に、「年末時点での住宅ローンの残高の0.7%」が、入居時から最長13年間にわたって、給与などから納めた所得税や住民税から還元されるという税金の優遇措置です。
例えば、年末に住宅ローン残高が2000万円あった場合、その年の所得税から14万円が控除されます。さらに、住民税については後に説明しますが、控除しきれなかった分は翌年分の住民税から最大9万7500円が控除されます。
所得税から控除できなかった分は住民税から控除可能
「住宅ローン控除(減税)は所得税の負担を減らしてもらえる制度ですが、所得税だけでは控除しきれないときには住民税からも控除されます(新築住宅は9万7500円/年が上限)。ただし、ご自身が納めた所得税や住民税以上のお金が控除される(戻ってくる)ことはありません。
例えば、所得税から30万円引いてもらえる権利があるのに、実際に払った所得税が25万円だったなら、5万円分は住民税から引いてもらえるので無駄にならないというイメージです。
ただし、住民税は前年の所得に応じて決まった金額を翌年に支払う仕組みなので、住民税は「戻ってくる」わけではなく、「翌年分が安くなる」ことになります。
住宅ローン控除(減税)が生まれた背景
住宅市場は日本経済の中で非常に大きなマーケットで、住宅市場の停滞は経済市場に大きな影響を及ぼします。住宅ローン控除(減税)の歴史はとても古く、1972年に導入された住宅取得控除までさかのぼります。景気後退や増税などが住宅市場に大きな影響を及ぼさないように、国の政策で住宅購入者に対し税負担の軽減策が講じられてきたのがきっかけです。
住宅ローン控除(減税)制度の変遷
2021年12月10日に与党の税制調査会がとりまとめた「令和4年度(2022年度)税制改正大綱」では、住宅ローン減税の控除率や減税期間、住宅ローンの借入限度額などが見直されました。新制度では2025年末までと、制度自体は4年間延長されました。ちなみに見直し前の2022年以前の住宅ローン控除(減税)は以下のような内容でした。
・新築や中古の区別なく一律で控除期間10年、控除率は1%
・借入の限度額は新築・再販が4,000万円、中古・リフォームが2,000万円
2022年税制改正後は以下のように変更されました。
住宅ローン控除(減税)制度の概要(2023年度)
・控除率…………新築も中古も一律0.7%
・控除期間………新築・再販は13年間、中古住宅やリフォームは10年間
・借入限度額……新築・再販は3000万円、中古・リフォームは2000万円
・最大控除額……新築・再販は21万円/年、中古・リフォームは14万円/年
控除率は1%から0.7%に縮小しました。控除率が下がった理由として、住宅ローンの超低金利の影響で控除額がローンの支払い利息額を上回る、いわゆる「逆ザヤ」が問題視されていたためです。
さらに、2022年の改正においては、2050年カーボンニュートラル実現の観点から、認定長期優良住宅(長期優良住宅)やZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅など「耐震・省エネ・バリアフリーなど環境性能の高い新築住宅」への税制優遇の拡充が行われました。
控除期間・控除率は変わりませんが、借入限度額が住宅の環境性能に応じて大きく変わりました。
以下の図は国土交通省の「令和4年度住宅税制改正概要」で、住宅の環境性能ごとに税制優遇条件が記載されています。
出典:国土交通省「令和4年度住宅税制改正概要」
図の通り、新築住宅や買取再販物件の場合、省エネ基準を満たさない一般住宅の借入限度額は3,000万円で、国が定める省エネ基準を満たした住宅であれば4,000万円、ゼロ・エネルギーハウス(ZEH)であれば4,500万円、長期優良住宅などの認定住宅であれば5,000万円というように、住宅環境性能によって借入限度額が変わります。
また、既存住宅(リフォームや中古物件)の場合、長期優良住宅やZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅であれば借入限度額は3,000万円、省エネ基準を満たさない一般住宅の借入限度額は2,000万円となります。
住宅の環境性能住宅ローン控除(減税)の控除額上限
下の図は住宅の環境性能ごとの1年間の住宅ローン控除額上限と合計控除額の上限を示しています。
環境性能の基準 | 1年間の住宅ローン控除額上限 | 合計控除額の上限 |
長期優良住宅・低炭素住宅 | 35万円 | 455万円 |
ZEH水準の省エネ住宅 | 31.5万円 | 409.5万円 |
省エネ基準適合住宅 | 28万円 | 364万円 |
上記以外の住宅 | 21万円 | 273万円 |
また所得税から控除しきれなかった場合の住民税の控除額についても、改正で変更となりました。
改正前は「最大13万6500円」でしたが、改正後は「最大9万7500円」まで引き下げ(厳密には、2014年までの水準に戻った)となっています。
2024・2025年に新築住宅に入居の場合は制度が変わる(改悪)ため要注意
なお、上記はすべて2022年度~2023年度の制度設計ですが、2024年度~2025年度は、「新築/中古の別なく一律で控除期間10年、控除率0.7%、借入限度額2000万円」で運用されることが決まっています。(2023年に建築確認をしている場合、所得が1,000万以下であれば、2,000万円まで適用可能)
さらに新築・買取再販に限っては、省エネ基準に適合している住宅であることが必須要件となり、基準に満たない新築物件は控除の対象から外れることになりました。ご入居のタイミングによって制度が変わるため注意が必要です。
住宅ローン控除(減税)のモデルケース
では、実際にどれぐらいの税控除を受けることができるのでしょうか?以下は2022年度~2023年度の制度設計で2つのモデルケースでの住宅ローン控除額となります。一例を参考にしていただければ幸いです。
モデルケース1・・・新築/買取再販を購入し2023年に入居した場合の住宅ローン控除(減税)
世帯主年収:500万円 | 借入金額:3500万円 | 入居時期:2023年 |
購入物件:新築/買取再販 |
配偶者:あり | 配偶者年収:0~150万円 | 住宅の種別:省エネ基準適合住宅 | |
住宅ローン控除額(減税額)合計:244.7万円 |
|||
1年目 | 19.53万円 | 8年目 | 19.53万円 |
2年目 | 19.53万円 | 9年目 | 18.99万円 |
3年目 | 19.53万円 | 10年目 | 18.35万円 |
4年目 | 19.53万円 | 11年目 | 17.7万円 |
5年目 | 19.53万円 | 12年目 | 17.04万円 |
6年目 | 19.53万円 | 13年目 | 16.38万円 |
7年目 | 19.53万円 |
モデルケース2・・・中古物件を購入し2023年に入居した場合の住宅ローン控除(減税)
世帯主年収:500万円 | 借入金額:3500万円 | 入居時期:2023年 | 購入物件:中古 |
配偶者:あり | 配偶者年収:0~150万円 | ||
住宅ローン控除額(減税額)合計:140万円 |
|||
1年目 | 14万円 | 8年目 | 14万円 |
2年目 | 14万円 | 9年目 | 14万円 |
3年目 | 14万円 | 10年目 | 14万円 |
4年目 | 14万円 | 11年目 | 0万円 |
5年目 | 14万円 | 12年目 | 0万円 |
6年目 | 14万円 | 13年目 | 0万円 |
7年目 | 14万円 |
モデルケース1と2は取得した物件が新築/買取再販か中古物件かの違いだけですが、住宅ローン控除(減税)額は100万円近く差が出ています。2022年の税制改正によって住宅ローン控除(減税)において控除期間や借入限度額、最大控除額などで大きな差が出るようになったことが見て取れます。
まとめ
マイホームは一生に一度の大きなお買い物です。間取りや物件探しももちろん大事ですが、税制優遇や補助金を活用することはとても重要です。
今回の記事では、マイホーム購入の際の税の優遇制度「住宅ローン控除(減税)」について、仕組みや優遇条件などについて解説しました。
「令和4年度(2022年度)税制改正大綱」では、住宅ローン減税の控除率や減税期間、住宅ローンの借入限度額などが見直されました。新制度では2025年末までと、制度自体は4年間延長されました。
今後、2025年の入居分までは控除が適用されることが決まっていますが、それ以降は廃止もしくはさらなる制度縮小になる可能性も無きにしも非ずです。
マイホーム購入の相談窓口では、大阪、神戸、京都、奈良をはじめとした関西において住宅専門ファイナンシャルプランナーが無理のない住宅予算診断から始まり、将来も見据えた資金計画、予算に合った物件や土地探し、安心できる不動産会社や住宅会社のご紹介までマイホーム購入にまつわるサービスをトータルサポートしています。特に、住宅ローン控除(減税)については単独債務なのかペアローンなのか?住宅ローンの組み方でも家計の負担軽減に大きく影響を及ぼしますので、今後の最新情報をしっかりチェックしていきたいところです。
次回は引き続き住宅ローン控除(減税)の適用要件や必要書類、手続き方法など詳しく解説したいと思います。
株式会社Erwin 代表取締役
マイホーム購入の相談窓口 代表、ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー、住宅FPエキスパート。不動産や住宅予算診断、住宅ローンの専門家として、第三者的な立ち位置からのお金の専門家として、その後の人生を考えた上でのアドバイスを行っている。不動産に関わる知識や税務などのライティングに携わる。