公開日 2023年10月29日 最終更新日 2024年3月29日
今回は前回に引き続き「住宅ローン控除(減税)」について解説します。前回は住宅ローン控除(減税)の仕組みや制度の概要などをお伝えしました。
住宅ローン控除(減税)に関する過去の記事はこちらから住宅ローン控除(減税)とは?仕組みや制度の概要をわかりやすく解説
今回は住宅ローン控除(減税)の適用要件や必要書類、手続き方法など詳しく解説したいと思います。
住宅ローン控除(減税)を受けるための適用要件とは?
住宅ローン減税の適用を受けるためには、以下の定められた要件をクリアしている必要があります。
新築の場合の住宅ローン控除(減税)の適用条件
新築住宅を購入し住宅ローン控除(減税)の適用を受けたい場合、以下の条件をクリアしなければいけません。
自分自身で居住するための住宅であること
住宅ローンは自分自身が住む住宅に対して借りることのできるローンという特性から、自分自身が居住していることが条件になるため、投資用物件や土地のみの購入(居住用住宅を建てる予定が当面ないなど)、別荘などのセカンドハウス、自分は住まずお子様など親族が住む目的の住宅については住宅ローン控除(減税)は適用することができません。ただし、転勤などで一時的に本人が居住していない場合は、家族が住んでいれば適用を受けることが可能です。
返済期間が10年以上あること
新たに借り入れた住宅ローンの返済期間が10年以上ない場合、住宅ローン控除(減税)を受けることができません。また、適用期間中に繰り上げ返済を行い、住宅ローン契約当初の返済初月から最終の返済月までの期間が10年未満になった時点で適用が受けられなくなってしまいます。
減税を受けようとする人自身が、住宅の引渡し日または工事の完了から6ヵ月以内に居住すること
引渡し日または工事の完了日から6ヶ月以内に居住を開始し、住宅ローン控除(減税)の適用を受ける各年の年末まで引き続き住んでいることが条件です。
特別控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であること
その年の合計所得金額*㊟1が2,000万円を超える場合、住宅ローン控除(減税)を受けられません。返済期間中、2,000万円を超えた場合はその年は控除を受けられませんが、超えていない年は受けることができます。なお、株式などの配当や売買益を特定口座源泉徴収あり口座で申告不要にしている場合には、その所得は算入されません。
*㊟1 合計所得金額とは、以下の合計額を指します
- 給与所得(給与所得控除後の金額)
- 不動産所得
- 譲渡所得
- 雑所得
対象となる住宅の床面積が50㎡以上であること
床面積に関しては、「登記簿」に記載されている数値で判断されます。マンションの場合、専有部分の面積で判断され、バルコニーや通路、階段、エレベーターなどの共用部分の面積は含まれません。また、マンションでは不動産会社の提供するチラシ(図面)などの床面積を「壁芯面積(壁厚の中心からの面積)」で表示していることもあるため、内法面積(壁の内側の面積)が50㎡以上であることが要件になっているため注意が必要です。
※ただし、合計所得金額1,000万円以下の場合で、2023年(令和5年)末までに建築確認を受けた新築住宅の場合は住宅の床面積が40㎡以上に緩和されます。
床面積の2分の1以上が自身の居住用であること
床面積の2分の1以上が居住用住宅であれば、「店舗併用住宅」や「賃貸併用住宅」も対象になります。
中古住宅の場合の住宅ローン控除(減税)の適用条件
住宅ローン控除(減税)制度では、中古住宅は「既存住宅」と「買取再販住宅」に分類されています。
既存住宅とは?
- 個人が売主の住宅
- 一般法人(宅地建物取引業者以外)が売主の住宅
買取再販住宅とは?
- 宅地建物取引業者により一定の増改築等が行われている住宅
既存住宅の場合の住宅ローン控除(減税)の適用条件
物件の売主が個人や一般法人の中古住宅を購入し住宅ローン控除(減税)の適用を受けたい場合は、上記新築条件に加えて以下のどちらか片方の条件をクリアしなければいけません。
1982年(昭和57年)1月1日以降に建築された住宅であること
これまで中古住宅における住宅ローン控除(減税)の適用条件として「耐火住宅築25年以内、非耐火住宅築20年以内」という築年数の条件がありましたが、2023年度より廃止となり「新耐震基準に適合している住宅であること」が新たに条件に加わりました。これにより、1982年(昭和57年)以後に建築された住宅は適合とみなされ、証明書不要で住宅ローン控除(減税)の対象となり、築年数に関する要件は大幅に緩和されました。
現行の耐震基準に適合していること
1981年(昭和56年)以前に建った住宅が「新耐震基準に適合している住宅であること」を証明するためには、「耐震基準適合証明書」が必要になります。「耐震基準適合証明書」とは、建築基準法で定められた耐震基準を示す証明書で耐震基準適合証明書を取得できれば、1982年(昭和57年)より前に建てられた物件でも住宅ローン控除を適用できます。
買取再販住宅の場合の住宅ローン控除(減税)の適用条件
買取再販住宅について詳しく説明すると以下の通りです。
「不動産業者が既存住宅を買い取り、リフォームして一般向けに販売されている物件で、市場で販売されている物件を一旦不動産業者が買い取り、リフォーム後に再度販売される物件」
以下は国税庁のホームページに記載された「買取再販住宅」の概要になります。
買取再販住宅の概要:買取再販住宅とは、宅地建物取引業者が特定増改築等をした既存住宅を、その宅地建物取引業者の取得の日から2年以内に取得した場合の既存住宅(その取得の時点において、その既存住宅が新築された日から起算して10年を経過したものに限ります。)をいいます。
買取再販住宅の場合は新築住宅の適用条件に加え、以下の条件をクリアしなければいけません。
- 宅地建物取引業者から住宅を取得していること
購入物件の売主が個人や一般法人ではなく宅建業者であることが条件となります。
- 宅地建物取引業者が住宅を購入し、リフォーム工事から再度販売するまでの期間が2年以内であること
- 取得時点で、新築日から築年数が10年を経過した住宅であること
- 買取再販業者がリフォームに要した工事費用の総額が、個人に対する売買価額(税込)の20%以上であること
- 大規模修繕や耐震基準に適合するための工事(安全性、省エネ性、バリアフリー性など)が行われていること
住宅ローン控除(減税)の手続き方法『初年度』
一般的には会社員や公務員は毎年の確定申告をする必要はないのですが、1年目は住宅ローン控除(減税)を受けるために入居した年の翌年に確定申告をする必要があります。確定申告は初年度のみで、2年目以降はご勤務先の年末調整に指定の書類を提出すれば年末調整で控除が受けることができます。
住宅ローン控除(減税)の確定申告の時期は?
確定申告の期間は原則として入居した年の翌年の2月16日から3月15日までですが、税金が戻ってくる「住宅ローン控除(減税)手続き」のみ行いたい場合は、1月から行うことが可能です。
確定申告時の主な必要書類は?
必要事項を記載した確定申告書へ、以下の書類を添えて納税地(原則として住所地)の所轄税務署へ提出します。
必要書類 | 取得先 |
①本人確認書類(マイナンバーカードの写しまたはマイナンバーが記載された住民票の写しと運転免許証など身元確認できるものの写し) |
|
②源泉徴収票 | 勤務先 |
③確定申告書 | 国税庁ホームページや最寄りの税務署 |
④住宅ローンの「年末残高等証明書」 | 借入れをした金融機関 |
⑤建物・土地の「登記事項証明書」 | 登記情報提供サービス や法務局の窓口 |
⑥建物・土地の「建築工事請負契約書」や「不動産売買契約書」のコピー |
注文住宅の場合:ハウスメーカー等と契約した建築工事請負契約書の写し それ以外:不動産売買契約書の写し |
⑦住宅借入金等特別控除額の計算明細書 |
国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」で作成、または最寄りの税務署で入手 |
③確定申告書や⑦住宅借入金等特別控除額の計算明細書は、指定の用紙をもとにご自身で記入して作成する必要があります。詳しい記入方法は最寄りの税務署を訪れて教えてもらうことができます。
その他条件により必要な書類
取得した住宅の種類や性能、取得した経緯によっては住宅ローン控除(減税)を受けるために別途下記の提出書類が必要となります。
一定の耐震基準を満たす中古住宅(既存住宅や買取再販住宅)を購入した場合の必要書類
必要書類 |
取得先 |
耐震基準適合証明書または住宅性能評価書 |
売買契約をした不動産会社 |
認定長期優良住宅か認定低炭素住宅を購入・建築した場合の必要書類
必要書類 |
取得先 |
「長期優良住宅認定通知書」または「低炭素建築物新築等計画認定通知書」と「住宅用家屋証明書」等 |
売買契約した不動産会社か施工会社 |
ご親族から住宅取得等資金の贈与の特例を受けた場合の必要書類
必要書類 |
取得先 |
住宅取得等資金の金額を証明する書類の写し(例:贈与税の申告書) |
最寄りの税務署等 |
国または地方公共団体などから補助金の交付を受けた場合の必要書類
必要書類 |
取得先 |
補助金額を証明する書類(例:補助金決定通知書) |
国または地方公共団体 |
住宅ローン控除(減税)はどうやって申告する?
住宅ローン控除(減税)の申告方法は以下の通りで、ご自身で選択可能です。
・最寄りの税務署に行く
・国税庁のサイト上で書類を入手して税務署に郵送する
・国税庁のサイト上で書類を作成しインターネットで申請する
手続き方法が不安な方は電話で最寄りの税務署に問い合わせたり、直接税務署を訪れるのも一つの手段です。また、多忙により対応できるかどうかわからないという方は税理士に依頼することも可能です。
住宅ローン控除(減税)の2年目以降の手続き方法
住宅ローン控除(減税)の2年目以降については、会社員や公務員などの給与所得者と個人事業主などの自営業者とで手続き方法が異なります。
会社員や公務員などの給与所得者の2年目以降の手続き方法
会社員や公務員等の給与所得者は勤務先に「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を提出することで、年末調整のみで申請は完了します。
2年目以降は「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」や「残高等証明書」の提出でOK
2年目以降の具体的な申請方法は、入居2年目の10~11月ごろに税務署から「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」 *㊟2が、金融機関からは「残高等証明書」が送られてきます。
これを11~12月頃に勤め先で行われる年末調整の手続きの際に提出すれば申請は完了するためとても簡単です。
年末調整で申告書類の提出を忘れた場合は?
また、万が一年末調整で申請書類の提出を忘れてしまっても、確定申告で住宅ローン(控除)減税の手続きを行うこともできます。
*㊟2 税務署から送られる「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」は、2年目に翌年以降の控除期間分がまとめて送られてきますので紛失しないよう管理しておきましょう。
個人事業主などの自営業者の2年目以降の手続き方法
個人事業主などの自営業者は毎年確定申告を行うことから、2年目以降も住宅ローン控除の確定申告が必要になります。源泉徴収票と住宅ローンの年末残高等証明書を添付して、期間中に確定申告を行いましょう。
住宅ローン控除(減税)還付の時期
住宅ローン控除(減税)還付の時期については、所得税と住民税でそれぞれ時期が異なります。
所得税の住宅ローン控除(減税)による還付の時期
所得税の住宅ローン控除(減税)による還付の時期は、確定申告年は税務署の繁忙状況にもよりますが、確定申告後から1ヵ月~2か月ほどで所定の銀行口座に直接還付されます。
住民税の住宅ローン控除(減税)による還付の時期
住民税の住宅ローン控除(減税)による還付の時期は、申告した年の6月以降にかかる住民税から減税されることになります。
まとめ
今回の記事では、マイホーム購入の際の税の優遇制度「住宅ローン控除(減税)」について、必要な条件や必要書類、手続き方法などについて解説しました。
税制改正大綱が2023年3月28日に国会で承認され、住宅ローン控除(減税)は引き続き延長となりましたので、まだまだ住宅取得の恩恵を授かれます。住宅ローンの負担も大きく軽減される非常に有難い制度ですが、反面「ご自身で手続きをしないと税額控除はできない」点には注意が必要です。初年度の確定申告や次年度以降の年末調整で所定の手続きをご自身でする必要があります。何もせずにおくと税額控除が受けることができなくなるため注意しましょう。
住宅購入の際には、住宅ローンの返済額だけではなく、住宅ローン控除(減税)金額も含めてシミュレーションを立てることが重要です。とはいえ、住宅ローン控除(減税)を受けるための条件や控除額の計算方法は、複雑でわかりづらいものです。また、住宅ローンの手続きや必要書類、審査のスケジュールなど不安なこともあるでしょう。
マイホーム購入の相談窓口では、大阪、神戸、京都、奈良をはじめとした関西において住宅専門ファイナンシャルプランナーが無理のない住宅予算診断から始まり、将来も見据えた資金計画、予算に合った物件や土地探し、安心できる不動産会社や住宅会社のご紹介までマイホーム購入にまつわるサービスをトータルサポートしています。住宅ローン控除(減税)についても税理士と連携しながら相談を承っております。
住宅ローン控除(減税)は、住宅の性能をはじめ、単独債務なのかペアローンなのか?住宅ローンの組み方でも家計の負担軽減に大きく影響を及ぼしますので、今後の最新情報をしっかりチェックしていきましょう。
株式会社Erwin 代表取締役
マイホーム購入の相談窓口 代表、ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー、住宅FPエキスパート。不動産や住宅予算診断、住宅ローンの専門家として、第三者的な立ち位置からのお金の専門家として、その後の人生を考えた上でのアドバイスを行っている。不動産に関わる知識や税務などのライティングに携わる。