公開日 2022年3月12日 最終更新日 2024年6月14日
家づくりにおいて悩みの種のひとつになりがちな「適正な住宅予算」っていくらなの?というテーマ。正しい住宅予算がわからぬまま家づくりの相談を進めることは、ナビのない車で目的地に向かうようなものです。ゴールにたどり着くまでに道を間違えたり、結局たどりつけなかったり…無事にたどり着くまでに不安でいっぱいになりますよね?では、家づくりの流れの中で「適正な住宅予算」を知るためにはどのような点に気を付けるべきなのでしょうか?
今回はその押さえるべきポイントを3つに絞って解説していきます。
銀行から「借りられるお金」とは?
お家を購入する際、建てる際の適正予算を考えた場合、2つの見方があります。
それは金融機関から「借りられるお金」と本人が「返していけるお金」です。
一般的に住宅展示場で住宅会社の営業さんに住宅ローンの相談をされた場合、その人の「借りられるお金」を確認するために「返済比率」という銀行の融資条件のものさしを計算して融資の判断材料にしています。
「返済比率」は年収に占める住宅ローンの年間返済額の割合のことで、その返済比率が低いほど、ゆとりある返済が可能となります。
例えば、年収500万円の人が年間返済額で150万円(月12.5万円)の住宅を取得しようとした場合の返済比率は、
150万円÷500万円×100=30%(返済比率)となります。
一般的な銀行では年収に対する住宅ローン返済比率は
30~40%程度が上限(融資できる範囲内)
となります。
また、フラット35の住宅金融支援機構の場合は、融資の条件を
年収400万円未満の人であれば30%以下
年収400万円以上の人であれば35%以下
と設定しています。
この条件に当てはまる支出の範囲内であれば購入可能ということになります。
具体的に、Aさんは年収500万円あって、土地建物を含めて5000万円の住宅購入を検討しています。
借り入れを検討している銀行の金利が0.5%(変動金利)で35年の返済で計算すると、月額返済額は129,792円
(年間返済額1,557,504円)となります。
返済比率は155万円÷500万円×100=31%となり、銀行の融資条件に当てはまれば融資可能というGOサインがでます。この融資を受けることのできる31%を基準にして商談が進みます(融資審査ではそれ以外にももちろん細かい条件は存在します)。これがいわゆる「借りられるお金」です。銀行のお墨付きがついた「借りられるお金」なので心配いりません…という話なのですが、果たして本当に大丈夫なのでしょうか?
借りられるお金で家を建ててしまうリスクは?
私たちの毎月の支出には、日々かかる生活費(食費や日用雑貨品の購入費、水道光熱費など)や衣服代、イベント費用(旅行や趣味に費やす費用)、保険にかかる費用、お子様にかかる費用など、住宅費用以外にかかるものはたくさん存在します。
単純に返済比率31%ということは、年収全体の3割強を住宅費だけで占めているということです。
国土交通省の住宅市場動向調査では、現在住んでいる住宅を注文住宅、分譲戸建て住宅、分譲マンション、中古戸建て住宅、中古マンション、民間賃貸住宅の6項目に分類し、それぞれについて各種統計を取っています。住宅市場動向調査の「世帯年収」と「年間返済額・家賃」の調査結果をもとに、住まいの種類ごとに年収に占める年間返済額・家賃の割合を計算したところ、下記のような結果となりました。
住まいの種類 | 世帯年収に占める年間返済額・家賃の割合 |
注文住宅 | 16.7% |
分譲戸建て住宅 | 17.1% |
分譲マンション | 15.8% |
中古戸建て住宅 | 14.8% |
中古マンション | 13.4% |
民間賃貸住宅 | 19.9% |
世帯年収に占める年間返済額・家賃の割合は13.4〜19.9%と金融機関の融資の条件となる「収入の30~40%」と比較すると、かなり低い割合であることがわかります。持ち家の場合は住居費用に住宅ローン返済額だけでなく固定資産税なども含まれますし、戸建て住宅であれば定期的に建物や住宅設備の修繕費用がかかってくるので、そのための資金を確保しておく必要があります。また、マンションの場合は、別途修繕積立金や管理費がかかります。よって、現実の住宅費の割合は今回算出したものよりも少し高い数字となります。しかし、諸経費を加えた住居費全体でも、収入の30%よりは低い割合になると考えていいでしょう。
一般的に住宅費の割合は「収入の30%」が目安とされますが、統計結果から判断するとと30%では高すぎるといえます。また、生活実感からいっても30%では厳しいというのが現実です。
実際に「返していけるお金」とは?
住宅取得後もお金に困らないようにするには本当に「返していけるお金」がいくらなのか?ということを把握することが大事なのです。
例えば、年収500万円の家庭が2世帯あったとします。
1世帯は、お子さんがいらっしゃらないご夫婦だけの家庭。
もう1世帯は、お子さんが4人の大家族。
使えるお金が全然違ってきますよね。
教育費などのお金も違うし、日々の生活にかけるお金も違います。
これで、同じ年収でも違う家族構成のご家族が住宅予算を同じようにかけてよいのでしょうか?「返していけるお金」がそれぞれのご家庭にとって違うことを知ることが、とても大事です。
一つのものさしとして、返済比率20%内に押さえることが目安となりますが、あくまで目安です。正確な「返していけるお金」を知る方法はそれぞれのご家族の今後の人生設計(ライフプラン)を立てる必要があります。
まとめ
「返済比率」をもとに安易にお任せで住宅予算を決めてしまうと、成功することもあれば、後々とても恐ろしいことが起こりえる可能性もあるのです。
マイホームは一生に1度の大きなお買い物。だからこそ、この先のご家族の人生設計を立て、それにかかるであろう支出を算出し、支払い可能な住宅予算「返していけるお金」を知ることが将来の成功への近道となります。
マイホーム購入の相談窓口ではライフプランの作成と予算診断をさせていただいています。
住宅会社でもない銀行でもない中立な住宅専門ファイナンシャルプランナーだからこそご家族の安心をずっと支えていきます。
ご相談やお問い合わせはこちら↓
株式会社Erwin 代表取締役
マイホーム購入の相談窓口 代表、ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー、住宅FPエキスパート。不動産や住宅予算診断、住宅ローンの専門家として、第三者的な立ち位置からのお金の専門家として、その後の人生を考えた上でのアドバイスを行っている。不動産に関わる知識や税務などのライティングに携わる。