公開日 2023年4月13日 最終更新日 2023年5月21日
金利上昇時の住宅ローン選び「固定金利と変動金利のメリットデメリット」
マイホーム購入は長い人生の中でも特に大きなお買い物です。マイホーム取得後の金利の上昇に伴い、返済する負担が増える可能性もあります。
そのため、予め自分たちにとって最適な住宅ローンを選んでおくことが大切です。
住宅ローンの金利タイプは大きく分けると「固定金利型」と「変動金利型」があります。住宅ローンを決定する際、固定金利と変動金利の違いを理解することが重要です。
この記事では、固定金利と変動金利のそれぞれの特徴を詳しく説明し、どちらの金利が自分に合っているのかを深く理解できるようにします。
住宅ローン金利はどうやって決まる?
固定金利と変動金利のどちらが自身に合っているのか?特徴を理解する際に、まず最初に住宅ローン金利がどのように決まっていくのかを知っておく必要があります。
住宅ローンの金利は店頭金利−引き下げ金利=適用金利で決まる
住宅ローンの借入金利は一般的に、店頭金利−引き下げ金利=適用金利の計算式で決まります。
まず、これら3つの用語について説明します。
店頭金利とは?
店頭金利は基準金利とも呼ばれ、住宅ローンの基本となる金利です。商品価格に例えると「定価」のような位置づけです。固定金利は一定期間の店頭金利が固定されている住宅ローンです。変動金利は、返済期間中に店頭金利が変動する可能性がある金利タイプです。
固定金利の店頭金利は融資実行後は長期金利が変動しても一定
固定金利の店頭金利は、一般的に長期金利(別名:長期プライムレート)の影響を受けますが、住宅ローンの融資実行後に長期金利が変動しても、金利を固定している期間中は、店頭金利の見直しは行われません。(下図参照)
変動金利の店頭金利は短期プライムレートが影響する
一方、変動金利の店頭金利は一般的に短期プライムレートに影響を受けます。変動金利の場合は、住宅ローンの融資実行後に短期プライムレートが変動すると、半年ごとの金利見直し時に店頭金利も変動します。(下図参照)
店頭金利のベースになる長期金利と短期プライムレートは国内の金利情勢によって変化します。つまり、店頭金利は、金融機関の判断だけでなく様々な外部要因の影響を受けながら決定される金利ということになります。
引き下げ金利とは?
引き下げ金利は優遇金利などとも呼ばれ、店頭金利から引き下げる金利のことです。商品価格に例えると「ディスカウント価格」のような位置づけです。国内の金利情勢の影響を受ける店頭金利に対し、引き下げ金利は各金融機関が独自に決定するため、外的要因による影響は受けません。一般的に一定割合以上の自己資金の有無や、新規借入か借換えかなどの違い、あるいは借りる人の審査結果などによって、同じ商品であっても引下げられる金利は異なります。また、一定期間のキャンペーンで引き下げ金利を大きく取る金融機関も存在します。
当初期間固定型や固定期間選択型住宅ローンは返済途中で引き下げ金利が変わる
固定金利の住宅ローンには「当初期間固定型」や「固定期間選択型」と呼ばれる金利タイプがあります。文字通り全期間固定ではない金利タイプで、これらは途中で引き下げ金利が変わります。このようなタイプの商品は借入金利も返済途中で変化する点に注意が必要です。下記に当初期間10年固定型の住宅ローンの例を挙げてみました。当初10年間は引き下げ金利が2.65%で引き下げ幅が大きく、11年目以降は1.5%と当初期間と比べ引き下げ幅が小さくなり、返済途中で返済額が変動します。(下図参照)
一方、全期間変動金利のタイプの住宅ローンは、店頭金利の変動リスクはあるものの引き下げ金利は一定に保たれている商品が多い傾向があります。
適用金利とは?
適用金利は、実際に住宅ローンの借り手が負担する金利です。先述の計算式の通り、店頭金利から引き下げ金利を引くことで求められます。商品価格に例えると、値引き後の「購入価格」といったイメージです。
住宅ローンの返済中に金利が上がった際には、その原因は店頭金利が上がった場合、引き下げ金利が下がった場合、もしくはその両方が考えられます。
住宅ローンを選ぶ際の固定金利と変動金利の特徴
では、具体的に固定金利と変動金利の特徴について説明していきます。
固定金利の特徴
特徴1 金利上昇リスクがないため将来の見通しが立てやすい
固定金利は金利が固定されている期間中はずっと同じ金利のため、返済期間中に市場金利が上昇した場合でも金利上昇リスクを心配する必要がないのが特徴です。一般に、金利が変わらないため、将来的な支払額が変わらず把握できることを望む人は、固定金利型ローンを好む傾向にあります。
特徴2 金利は長期金利(新初10年国債利回り)に基づいて決まる
固定金利は「長期金利」を参考に決定されると言われています。長期金利の代表的なものは「新たに発行された10年国債利回り」です。国債とは国の発行する債券で、債券とは国や政府・地方公共団体、企業などが、資金を投資家などから借り入れるために発行する有価証券の一種で、国債は国がお金を借り入れる際に発行される有価証券です。借用証書の意味もあります。
特徴3 日本国債は日本国の借金の借用証書
日本国債は日本国の借金の証書になります。借金のため、満期がきたら国は利子をつけて返す義務があります。債券の発行ごとに利率や利払日、償還日などの条件が決められており、購入した投資家はその利子を受け取ったり、元本を返済されたりします。
特徴4 基となる長期金利は物価や景気動向に影響を受ける
長期金利は、短期金利の動向に、投資家たちの予測を加味して決定され、利回りの水準は主に国内外の投資家が参加する市場取引で決定されます。
一般的にインフレが高まるとの予測が多くなれば長期金利は上昇しやすくなり、経済が高成長するとの予測が強まれば資金需要の高まりを見越して、やはり長期金利は上昇します。
投資家たちはこの予測の意思表示を、新たに発行された10年満期の国債の入札価格で行います。
今後の金利動向予測から、発行された10年国債が魅力的であると判断すれば高い価格を入札します。逆にあまり価値がないと思えば安い価格でしか入札しません。
実際の債券の利回りは、表面利率に入札価格による損益が加えられて算出されます。
算出された新たに発行された10年満期の国債の利回り、これを私たちは「長期金利」と呼んでいます。
変動金利の特徴
特徴1 固定金利と比較して金利が低め
変動金利は固定金利と比較すると金利が低めなのが特徴の一つです。固定金利に比べ金利負担が減るため、借り手にとっては毎月の返済額が少ないため、魅力的に感じます。
特徴2 一般的に半年に1回程度の金利見直しがある
変動金利は一般的に半年に1回金利の見直しがありますが、金利見直しの基準は各金融機関によって異なります。
特徴3 金利は短期プライムレートに基づいて決まる
変動金利の金利は優良企業向けに短期間融資する際の金利である短期プライムレートの金利動向を見ながら、各金融機関が店頭金利を設定し、銀行ごとに一定の金利引き下げを行うことで決定しています。短期プライムレートは1年未満の短期貸出期間で銀行が大手企業向けに融資する際の指標で、市場金利に連動して変動しています。金利の見直し時にも参考にされるのは主に短期プライムレートとなります。
変動金利の引き下げ幅は、一般的に全期間一定ですが、店頭金利の参考となる短期プライムレートは変動します。したがって、短期プライムレートが上昇すれば、変動金利も上昇し、反対に短期プライムレートが下落すれば、変動金利は下落することが想定されます。
ちなみに、現状の主要銀行をはじめ各銀行の短期プライムレート最頻値は年1.475%です。この数値は2009年1月13日以降一切変わっていません。(下図参照)短期プライムレートは変動しにくいと言えます。そのため、変動金利の店頭金利は直近20年ほどはほぼ横ばいに推移していて、こちらも最低クラスの低金利をキープしています。
ただし、現状は低金利の状況ですが変動金利は短期プライムレートなど市場の金利の動きに左右される面があるため、選択する場合金利動向に目を配っておくことが必要です。
特徴4 5年ルールとる125%ルールがある
変動金利は金利が変動するからといって、金利が急上昇するわけではありません。変動金利にはルールがあり、適用金利が半年ごとに変動しても返済額が急激に増加しないよう、返済額については5年ごとに見直される「5年ルール」(金利が上がっても5年間は返済額が変わらないルール)と、上昇幅を直前の返済額の1.25倍までに抑えられる「125%ルール」を適用しています。ただし、これらの条件を適用していない金融機関もあることから注意が必要です。
住宅ローンを選ぶ際の固定金利や変動金利に向く人
上記で説明してきた特徴を踏まえて、固定金利と変動金利それぞれに向く人はどのような人なのでしょうか?
固定金利に向く人
固定金利に向いているのは、以下のような人です。
<class=”text-bold”>1.今後金利が上昇すると感じる人
固定金利は、金利が固定されている期間中であれば、変動金利のように金利上昇リスクがありません。そのため、将来金利が上昇するだろうと感じている人は、固定金利を選ぶと良いでしょう。
<class=”text-bold”>2.返済期間中に金利が上がるのは怖いと感じる人
日々お忙しく、なかなか世の中の動向をチェックしている余裕のない方や、変動金利の金利見直しのタイミングで新しい住宅ローン金利をチェックするのが大変だと感じたり、面倒に感じる人は、金利が変わらない固定金利をおすすめします。
<class=”text-bold”>3.子どもの教育資金の支出増加や育児や親の介護で妻が仕事を辞めて収入が減るなどで返済額を一定にしたい人
子どもの教育資金など数年~十数年後に訪れる進学期に急激に支出が増える場合、金利上昇に伴う住宅ローン返済額の増加は家計を破綻させかねません。固定金利で毎月の住宅ローンの返済額を一定額で保つことで、毎月の家計の支出の見通しが立てやすくなります。
4.固定金利期間は老後に向けてや教育資金負担など今後のリスクによって選ぶ
また、固定金利の中でも今後のライフプランによって全期間固定を選ぶのが良いのか、期間選択型を選ぶのがよいのか変わってきます。例えば、老後の生活までなど長期的なライフプランを今のうちから立てておきたい人には全期間固定型がおすすめで、子どもの学費負担がなくなるまでなど一定期間の返済額を一定にしておきたい人には期間選択型がおすすめといえます。
変動金利に向く人
一方、変動金利に向いているのは、以下のような人です。
1.今後金利の上昇があっても家計にゆとりのある人
ただ単に金利が低いからという理由だけで変動金利を選択するのは大きな間違いです。今後教育費の増加や育児や親の介護などで妻が働けなくなったりするリスクがない人や、金利が上昇しても家計がひっ迫する心配がなく、家計にある程度余裕がある人におすすめといえます。
2.短期で住宅ローンを完済できる予定の人
現在手持ち資金に余裕があったり、近い将来贈与や相続などでまとまった資金の確保ができるなど、5~10年程度の比較的短期で住宅ローンの完済が可能な人は変動金利を選択することによる金利変動リスクが少ないためおすすめです。
3.今後の短期プライムレートが変わらないと感じる人
金利は今後しばらく変わらないと思う人は、選択肢の一つになります。もし今後市場の金利が上がると考えている人は、選ばないほうが賢明といえます。
4.投資に慣れており経済や金利を読む力に自信があってリスクが取れる人
変動金利は扱いが難しく、自分のライフプランを踏まえた上で慎重に検討して選ぶ必要があります。将来の金利動向は経済分析のプロでもなかなか当てられないため、やはり金利上昇時のリスクをしっかりと取れる人におすすめといえます。
まとめ
変動金利の低い金利で借りないと返済が難しい人は要注意!
固定金利と変動金利どちらがが良いのかは、自分の経済状況やリスク許容度を考慮することが重要です。どちらを選ぶにしても、メリットとデメリットを理解した上で、最終的な決断をすることが重要です。金利が上がって返済額が増えると住宅ローンが返せなくなるぎりぎり家計の人や、変動金利の低い金利で借りないと返済が難しいという人はそもそも身の丈を超えた住宅ローンを借りてしまう可能性が大です。非常に危険な選択ですが、正しいアドバイスがないためにこのような選択をされる人が多いのも実情です。マイホーム購入そのものを考え直す必要があるかもしれませんので、これらに該当する人は注意が必要です。マイホームの購入を検討する場合、最初にファイナンシャルプランナー(FP)に資金相談をすれば、身の丈を超えた住宅ローンを借りてしまうことは防ぐことができます。
株式会社Erwin 代表取締役
マイホーム購入の相談窓口 代表、ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー、住宅FPエキスパート。不動産や住宅予算診断、住宅ローンの専門家として、第三者的な立ち位置からのお金の専門家として、その後の人生を考えた上でのアドバイスを行っている。不動産に関わる知識や税務などのライティングに携わる。