公開日 2022年5月28日 最終更新日 2022年11月23日
2020年から2021年、新型コロナウイルスまん延による影響で打撃を受けた経済を立て直すために、海外の主要な国では政策金利を引き下げる等の金融緩和政策がとられてきました。日本における住宅ローン金利なども同様に、日銀による金融緩和政策と金融機関同士の競争の激化により、ここのところずっと低金利の状態が続いています。
しかし、ワクチンの普及等の影響もあって徐々に経済が動き出すとともに、例えばアメリカでは金利を上げ始めているように大きく方向転換し始めている国も出てきました。
では、日本の住宅ローン金利は今後どうなっていくのでしょうか?前回は固定金利の特徴と今後の景気変動による利用方法の注意点などを説明してきました。
今回は固定金利と変動金利を比較をする上でも重要な住宅ローン金利の決まり方や、その役割を担う店頭金利や引き下げ金利、適用金利についてお伝えします。
住宅ローン金利はどうやって決まるのか?
固定金利は長期金利(10年国債)、変動金利は短期金利(短プラ)で決まる
前回の記事で説明しました、一般的に固定金利の基準金利は、マーケットの長期金利(主に10年国債利回り)の影響を受けます。一方、変動金利は日銀の政策金利の影響を受ける「短期金利」(短期プライムレート)を元に決められます。短期プライムレートとは、民間の金融機関が優良企業向けに1年以内(短期)の貸し出しをするときに適用する最優遇貸出金利のことです。優遇金利の定価のような位置づけとなります。
変動金利の短期金利(短プラ)は短期政策金利の影響を受ける
短期プライムレートは日本銀行が民間金融機関に対して当座(短期間)のお金を融資するときの金利である「短期政策金利」の影響を受けます。
上の図のように平成20年に世界の経済を揺るがすリーマンショックが起こりました。景気が悪化すると、日本銀行は短期政策金利を下げて企業が設備投資のための資金を借りやすくするために、民間金融機関が短期プライムレートを下げるよう誘導します。企業がお金を借りて積極的に設備投資をすれば景気が上向くためです。それと同様に住宅ローンの金利も下がります。金利が下がれば住宅購入者が増えて同じように景気が上向きます。
日本銀行は政策金利を操作しながら民間金融機関の金利を誘導しているのです。ちなみに、平成25年に短期政策金利をゼロ%(ゼロ金利政策)に,平成28年にマイナス金利政策で短期政策金利をマイナス0.1%にまで下げても以後短期プライムレートは全く下がらず、民間の金融機関の住宅ローン金利が底をついた状況であることが伺えます。
店頭金利(基準金利)と適用金利ってなに?
固定金利や変動金利に共通の話になりますが、ネットなどで住宅ローンについて調べると、金融機関のホームページなどで「店頭金利(基準金利)から最大▲1.5%」「適用金利は〇%」などという用語を見かけます。そもそも店頭金利(基準金利)や適用金利とはどういう意味なのか?これを正確に理解することが住宅ローンの金利の仕組みを知る近道になりますので頑張ってください。
「店頭金利」(基準金利)とは商品の定価のようなもの
「店頭金利」とは商品の定価のようなもので、「基準金利」とも呼ばれることがあります。
上のイラストで、店頭表示金利2.675%と書かれているのがこの銀行の住宅ローンの変動金利の20◯◯年◯月の時点での「定価」というイメージです。ここからマイナス2.050%「引き下げ」して0.625%になっているという意味になります。
「引き下げ金利」は「値引き」という意味
資料の▲2.050%は「引き下げ金利」(優遇金利とも呼ばれます)と呼ばれ「引き下げ」=「値引き」という意味で、
定価2.675%-2.050%値引き=0.625%になっているということです。
「適用金利」は値引き後の実際に住宅ローンを借り入れする際の金利
この0.625%が「適用金利」で、引き下げされた後の実際に住宅ローンを借り入れする際の金利で「売価」のようなイメージとなります。
このように、金融機関は日銀の短期金利を参考にしながら、様々な金利タイプの「店頭金利」(基準金利)を決めます。そして、店頭金利から「引き下げ幅」を差し引くことで、実際に利用者が借りるときの住宅ローンの金利である「適用金利」が決まる仕組みになっています。
住宅ローン選びで重要なのは引き下げ金利と適用金利
住宅ローンの変動金利において、金融機関の比較で重要になるのが、引き下げ金利と適用金利です。
引き下げ金利は、店頭金利から何%引き下げられているのか?その引き下げはいつまでなのかを確認する必要がありますし、適用金利は、毎月の返済額を算出するのに必要となります。
店頭金利と引き下げ金利、適用金利がある理由
では、なぜ民間の金融機関が一般のお客様がわかりずらい金利表示(店頭金利ー引き下げ金利)にあえてしているのでしょうか?その大きな理由は2つあります。
民間の金融機関は引き下げ金利で価格競争をしている
ひとつ目の理由は「引き下げ金利」によって他の金融機関との価格競争を行うためです。スーパーでうられている野菜を例に取ると、同じ出産地の野菜でもスーパーによって小売価格(値引き率)が異なります。それと同じように、住宅ローンも各金融機関が引き下げ金利で住宅ローンを検討している方に対してお得感を演出して価格競争をしているのです。
全期間固定型(固定金利)の金利は、10年国債の利回りなど長期金利の影響を受けます。変動金利型についても、バブル崩壊後は、ゼロ金利政策(金融緩和)が続いていて、金利はほぼ最低水準のままです。各金融機関は住宅ローンの店頭金利からの引き下げ金利(値引き)で他行との価格競争をしているのです。「ゼロ金利やマイナス金利下において、金利は低いのが当たり前」という世間の共通認識もあり、ある金融機関が、引き下げ幅を拡大すると、他の金融機関はさらに引き下げをするという状況が繰り返されてきました。こうした金融機関同士の「金利引き下げ合戦」も、金利競争を過熱させてきた原因の1つです。
引き下げ金利の操作で過去の住宅ローン借入者の金利を変えないようにしている
もうひとつの理由は、過去に住宅ローンを借りた人の金利を変えないようにするためです。「日本銀行」の「金融経済統計月報」によると、某銀行の変動金利の店頭金利(基準金利)は短期プライムレートと連動していて、平成21年より動きがなく、ずっと店頭金利は2.475%(水色の棒グラフ)のままです。
例えば上のグラフのように、A銀行では平成21年に店頭金利2.475%から1.5%引き下げた0.975%(赤い棒グラフ)の適用金利でした。令和2年に新たに住宅ローンを借りる人には2.475%から2.0%引き下げて0.475%(緑色の棒グラフ)の適用金利で融資を行っています。平成21年に借りた人は令和2年になっても変わらず適用金利は0.975%のままで、同じ銀行で同じ住宅ローン(店頭金利)の住宅ローンを借りていても借りる時期(引き下げ金利)によって適用金利が異なるのです。
このように、銀行は住宅ローンを借りる時期によって引き下げ金利を変えることで、過去に同じ住宅ローンを借りた人が金利が変わらないようにしているのです。仮にこのA銀行が住宅ローンの店頭金利(定価)を2%引き上げた場合、引き下げ金利は借入当初からずっと変わらないので、過去に住宅ローンを借りた人も2%金利を引き上げてしまうことになります。
それに対して、引き下げ金利を借入の時期によって上下させることは過去に借りた人の金利は変えずに、これから借りる人の金利だけを上下することになります。
また、引き下げ金利は全期間固定で同じ引き下げ金利の住宅ローンもあれば(全期間一律引下げタイプ)、一定期間の金利引下げ後、返済期間中に途中で金利引き下げ幅が変わる住宅ローンも存在します(当初期間引下げタイプ)。
まとめ
今回は固定金利と変動金利の住宅ローン金利が決まる仕組みを理解し今後比較検討する上で、以下のことについて説明させていただきました。
- 住宅ローン金利は固定金利は長期金利(10年国債)、変動金利は短期金利(短プラ)で決まる
- 変動金利の短期金利(短プラ)は日本銀行が操作する短期政策金利の影響を受ける
- 店頭金利(基準金利とも言う)は「定価」、引き下げ金利(優遇金利とも言う)は「値引き」、適用金利は値引き後の「売価」のイメージ
- 住宅ローン選びで重要なのは引き下げ金利と適用金利。
- 民間の金融機関は引き下げ金利で価格競争をしている
- 引き下げ金利の操作で過去の住宅ローン借入者の金利を変えないようにしている
このような内容をお伝えしました。次回はそれを踏まえて変動金利の特徴やメリット、デメリットについてお伝えいたします。
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